本屋でふと見かけて気になって読んだ。給食というのはもちろん長く遠ざかってるけど、娘が何年か先にお世話になるわけだし、せっかくだし読んでみるか、というノリ。
給食マニアというか、給食を作ることに人生を捧げてきた著者による本書はなかなか興味深かった。
僕自身が仕事で食事を作る、みたいなことをしたこともないからなのか、それとも大人数の食事を作ったことがないからなのかはわからないが、知らないことがいろいろとあり楽しめた。大人数の食事を作るというのはそれだけで別の知識や経験が必要。僕は普段料理をするからか気になっていた点で、とても楽しく読めた。
中でも、前日調理禁止というルールはなかなか衝撃だった。当日朝から作り、あの量の給食をおいしく作るて無理すぎん?と思ったがそれを実現している、という点に脱帽。すごいなほんと。プロってすごい。
前日調理が原則禁止なのも栄養士としてはつらいところです。昆布や乾燥豆やもち米を前日から水につけて戻しておく、ということは一切できません。そのため、出汁は食材の納品前に、朝イチで火にかけます。赤飯やあんこを炊く時も、当日の朝から小豆を水にひたし始めて、そこから昼の給食に間に合うように作っていくので、きちんと柔らかくなるか、毎回ひやひやします。
あと、給食ならではの子供の好みに振り切った調理はなるほどだった。きのこのプリプリ食感は子供に不評だから諦めて徹底的に炒めるが、旨み成分は受け入れられるはずだから、という話があった。おもしろい。大人にとっての美味しさではなく、子供に合わせることを最優先する、という。ユーザ目線だ。これぞプロ。
〝大人にとっての美味しさ〟を追求する町の飲食店とは真逆の方向に全振りするのです。このような点は、給食の特殊なところかもしれません。
料理って奥が深いな、というか改めて誰のために作るかの大切さを教えてもらった。給食を作る、というのはすごい仕事だ。
以上、給食の謎 日本人の食生活の礎を探る (幻冬舎新書)を読んでの感想でした。他にも給食の歴史についての記載があったり、給食から長らく離れている方にも楽しめる本になってると思います。終わり。