僕はカレーが好きだ。CoCo壱のカレーも好きだし、自分でカレールーから作るカレーも好きだ。最近はしてないがスパイスカレーも以前はよく作っていた。
そして、もちろんインドカレーも好き。熱々のナンと一緒に食べるスパイシーなカレーはなかなか自宅で作ることはできない。ときおり、無性に食べたくなるとお店によく行く。
そんなわけでインドカレー屋さんにはよく行くんだが、以前から思っていたことがあった。
"このお店、潰れないかな。人は入ってそうだけど、結構苦しいのでは。"
馴染みの書店でカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」 (集英社新書)を見かけて手に取った理由は、この疑問がきっかけだった。
結論からいうと、この疑問に対する答えが本書にはしっかりと述べられていた。僕の疑問は無事に解決された。
ただ、読み進めながら見えてきたのは日本という異国で働くお店の方々の苦労だった。異国で働くことはもちろん大変なことはそうだろう。が、個人的に気になったことは日本の受け入れ姿勢だった。
外国人はあくまで在留資格の更新を続けているだけの短期滞在者、というのが日本の基本的な姿勢だ。「移民」ではないのだ。だからこの国でコシを据えて、将来を考えようという外国人はあまりいない。どうしても出稼ぎ感覚だ。だから刹那的にもなる。日本にいるうちにできるだけ稼ごうと、同胞を食い物にするような人も出てくる。 結局のところ、カレー移民たちはこの国で移民になりきれなかったのだ。
移民の受け入れについては議論がさまざまある。簡単ではないと理解している。でも例えばこういった観点の改善は検討が必要だろうとたしかに思った。
そして日本はもっと「ホスト」としての自覚を持ってほしいと訴える。「学校の書類でも、役所や病院でも、せめて英語を併記してくれれば外国人のストレスはずいぶん減ると思います。それに学校や文科省の意識ももっと変わってほしい」
これは本書がメインとするネパールの方に限らずの話だろう。ただ、技術も進歩しているとはいえ、機械翻訳だけでは難しいはずでネイティブチェックはこういった類には必要と思う。なかなか難しいことも想像できる。
以前から気になっていたインドカレー屋の経営についての興味から手に取った本書だったが、思いがけず色々と考えさせられる内容だった。
日本という国に生まれたことは幸運だと感じつつも、この先の日本が苦しいことも明らか。その辺りについては先日書いた以下記事にもまとめた。僕の地元に限らず多くの地方都市が今後苦しくなっていくだろう。
僕は家族を残していわゆる出稼ぎに単身海外に行くことも考えている。この先の日本の状況によってはそういうことは起きうると覚悟している。覚悟している、と言いつつ、それはそれで楽しめそうだと楽観的に捉えている。そして、おそらく僕が現役のうちはそこまでのひどい状況にはならないだろうと考えている。なんやかんやいって、日本で稼げるのであれば日本に住み、働く方がベターだ。
が、僕の娘の時代はどうだろう。もっと本格的に海外に出稼ぎに行くことが当然になる可能性はあるだろう。人口が減る=経済規模が小さくなるのだからそれはそう。そういう時に、娘たちの世代の多くが異国で働く大変さを経験することになる。
僕自身はなんとかするとして、少なくとも娘にはそういう時代で生きる術を可能な限り伝えたい。
インドカレー屋の経営に関するちょっとした興味から様々なことを考えるきっかけになった本だった。おすすめの本です。終わり。