masayuki5160's diary

ソフトウェアエンジニアの雑多ブログ

システムを作らせる技術を読んで

TL;DR

本のタイトルと裏腹に、書籍の内容は僕のような事業会社でプロダクト開発をする人にも納得できる素晴らしい内容だった。そしてその本のタイトルはシステムを作らせる、という態度の人たちにプロダクトを一緒に作る必要性を説くため、という狙ったもの。そういう意味で、本の仕上がりが素晴らしかった。

"システムを作らせる技術"を読んで

 

はじめてこの本を知ったとき、正直に言って良い気分ではなかった。僕は作る側であって、作らせる技術、という言い方が嫌だった。失礼な本だと思った。ただ、どこの本屋に行ってもよく置いてあるし、Amazonのレビューも良いし、なんなんだろう、とずっと気になってた。

それから実際に読むまで、いろいろあったんだが、読んでみて素晴らしい本だと思った。たぶん今年読んだ本の中でもかなりおすすめのものになると思う。

なにがよかったか、というと、読者目線での本の仕上がり、ということになるのかな。

読んでいくとすぐ気づいたんだけど、タイトルと中身がなんだかずれてる。タイトルは非常に過激なことを言ってるのに、書いてあることは僕みたいな事業会社でゴリゴリエンジニアしてきた経験からみてもとても納得できることが多い。つい最近も基幹システムの移行かなにかがうまくいかず、商品の出荷が止まってしまった企業のニュースがあった。うちの娘も好きなプリンが買えなくなったので、ちょっとだけ大変だった。この本に書いてるような流れで開発してればこういったことは起きなかっただろうなと思う。

不思議な本だなー、と思いながらあとがきまで読み進めるとやっと腹落ちした。タイトルはあえて想定してる読者に刺さるようにしていたもののようだった。以下引用。

 

皮肉なことにそういう人々がいくらカネを払っても、「システムをつくらせる」という態度のままでは、システムをうまく作ってもらえない。だが、そういう人に「One Teamでやらなくちゃダメでしょ」と説教しても伝わらない。「作らせる方法を教えますよ」でなければ届かない。だから作らせる方法を学んでいくと、自然に「ともに作る」というスタンスが身につくような本を書いたわけです。我ながらめんどくさいことをやっている。

引用 

システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ (日本経済新聞出版)

 

なるほどー、と思った。そして、たしかにそういう人にはガッツリ届きそうだなと感じた。

 

僕も長らくソフトウェアエンジニアをして、博士の学位も取ったりしていろいろ見てきたつもりだけど、それでも僕が知ってるソフトウェア開発の現場なんてほんの少し。僕も自分だけの視点からだと大変な現場を経験してきたつもりだけど、もっと難しい現場もあるんだろうなと思ってる。その一つが”システムを作らせる”という態度で作る側と向き合ってる人たちがいる現場だと思う。想像しただけで難しそうなことがわかる。そんな現場をずっと見てきた著者陣だからこういった本に仕上げることを決めたんだなと理解した。

いろんな大変な現場があると思うけど、システムを作らせようとしてる方には激推しの本なので、苦しんでる作り手の方々はぜひこの本をすっと渡してあげると良いかなと思います。そしたら一緒にOne Teamでプロジェクトを進めることができるようになるかもです。素晴らしい本でした。終わり。