ソフトウェアエンジニアの僕が社会人学生をはじめて3ヶ月経った

下記記事でもお話をしましたが僕は2019年4月から南山大学理工学研究科ソフトウェア工学専攻にて社会人をしながら大学院生としてソフトウェア工学を学んでいます。

社会人学生として大学院に進むことにした

本記事では3ヶ月経ったのでそれを振り返りつつ、僕と同じように社会人学生を目指す方の参考になるようつらつらとまとめてみます。

学校が始まってからの生活

僕が通っている学校は社会人が通いやすいよう土曜日のみに講義を行ってくれています。そのため平日は通常通り仕事をし、土曜日は学校に行く、という生活です。入学式からしばらくは色々な書類の用意や確認、そして受講登録でてんやわんやでしたがそれも1週間程度のこと。それ以降は毎週講義にいき、研究をするという形です。この辺りは大学によって様々だと思います。僕がいってる大学がその辺りについて理解がある、ということでしょう。ありがたい。

実際にどれくらい忙しいのか

この辺りは気になるのではないでしょうか。結論からいうと、僕個人としてはそんなに忙しさは変わっていない感覚です。ただ、実際には土曜日は講義と研究室のメンバー、教授と議論などして丸一日潰れ、日曜日も基本は休みつつも講義の宿題や論文作成、そして研究をしていることが多いです。忙しいじゃないか、と思う方もいるかもしれません。が、僕にとってこれらは大学に通う前から変わらない日常で大して今までと変わっていません。以前は本を読んだり何か検証用にプロダクトを作ったりとしていたことが現在は講義の課題であったり研究に関係すること、論文作成に変わっただけです。

やっぱり忙しいんだ、と思うかもしれませんね。

それについては、僕と同じように休みの日にも技術書を読み漁ったりコーディングをしないような方にとってはYESになるでしょう。土日は丸々勉強漬けです。そりゃそうです、大学院行ってますし、研究するんですし。なので実際に社会人学生をしばらくやっての僕のアドバイスとしては、軽い気持ちで社会人学生にはなるべきではない、ということになります。ただ、休みの日も特に気にすることなく技術書を読んだりコーディングをしているような方々にとっては内容が少し変わるだけで問題なくこなせるのではないかと思います。むしろ毎週ソフトウェアエンジニアリングについて議論できる人がいる、というのは素直に楽しめると思います。僕は実際に若い学生達、そして先生方とソフトウェアについて色々と議論できる時間がもてて毎週楽しく過ごしています。

社会人になってから大学院に行くのはあり

これは僕が最近感じていることです。

僕自身は大学でも情報工学を学んでいましたが、家庭の事情もあり大学院には行かずそのまま就職をしました。当時の選択について後悔はありません。行けたら行きたかったな、くらいの軽い気持ちがあった程度です。今、社会人としてエンジニアの仕事を10年ほどしてから大学院に通ったから気づけたことがいくつかあります。

  • 全ての講義が先生方の深い知識と経験でしっかり練られている
  • 社会人としてソフトウェア開発の実践を経験したから気づける理論の大切さに改めて気づく(特に基礎)
  • 論文、学会というエコシステムの凄さ、ありがたさ

全ての講義が先生方の深い知識と経験でしっかり練られている

これは特にアルゴリズムの講義を受けているときに感じました。アルゴリズムの講義は下記書籍を利用しています。

アルゴリズムイントロダクション 第3版 第1巻: 基礎・ソート・データ構造・数学 (世界標準MIT教科書)

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アルゴリズムイントロダクション 第3版 第2巻: 高度な設計と解析手法・高度なデータ構造・グラフアルゴリズム (世界標準MIT教科書)

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ご存知の方もいると思いますが、この本なかなか難しくて読むのに苦労します。一方でこの本はアルゴリズムを本格的に学ぶのに素晴らしい本です。講義では先生のフォローをもらいつつ問題をときつつ理解を深めこの本を読み進めることができました。こういったことはやはり一人ではできませんし、先生のフォロー、サポートがあるのはありがたいと素直に感じます。他の講義でもそうですがやはり先生方の知識と経験を聞けるのは大学院ならではです。

社会人としてソフトウェア開発の実践を経験したから気づける理論の大切さに改めて気づく(特に基礎)

具体的に利用する技術は徐々に変わっていきます。転職を何回かしていることもありますがずっと同じプログラミング言語を使っているということもありませんし、サーバサイドからクライアントまで色々と学ぶことはうつってきました。その中でやはり基礎が大切だなと思うようになりました。それは大学院で学ぶようなことことでした。ソフトウェア工学そのものや上述のアルゴリズムについてなど。実際に腰を据えて学び直すとこれをしっかり身に付けることが僕にとってのソフトウェアエンジニアとしての底力になると感じています。

論文、学会というエコシステムの凄さ、ありがたさ

これはまだまだ僕は駆け出しなので理解しきれていない点もありますが、実際に論文を投稿したり、いくつも論文を読み進める中でこの論文を中心にしたエコシステムが非常に効率的なシステムなんだなと気づきました。僕が関わっているコンピュータやソフトウェア関連の分野についてはアカデミックとビジネスの距離が近く論文を読み、学会にも参加しエコシステムの中にいるだけでも多くの気づきと知識を得ることに繋がります。論文を投稿しコミュニティに入っていくことはなおさらいいのでしょう。実際に僕はソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2019(SES 2019)と機械学習工学研究会という場で発表する機会がありました。投稿した論文は以下で公開されました。

 

ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2019論文集 “複数プロダクトのエンタープライズアジャイル開発方法の提案と評価”

第2回機械学習工学研究会(MLSE夏合宿2019)論文集 “機械学習ソフトウェアシステムの環境変化適応の課題とアプローチ: スマートフォンのナビゲーションアプリケーションを例として”

 

学部生時代に卒業論文を書いてはいましたが、学会に論文を投稿するのは初めてでしたので色々と大変ではありましたが大学に入ってからすぐ担当教授に指導頂きながら論文を書いたのはよかったと思っています。授業の課題もこなしながらでなかなか大変ではありましたが、論文を書いたことで今後の研究のことや論文を書いていくペースなどのイメージをつかむことができました。そして、このエコシステムはすごいな、と実感しました。このコミュニティに入っていくきっかけとしての大学院という場は改めてありがたいなと感じています。

 

僕は学部生の時はあまり優秀ではありませんでした。(今は優秀だ、なんていうつもりはないですw)自分なりに色々と勉強はしていましたがあまりついていけず、なんとかギリギリ卒業した、という感じでした。そして自分が本当にエンジニアとして仕事ができていくかについてもさっぱりわかりませんでした。情報工学の勉強をしてきたことが役に立つのかな、と。学部を卒業して10年ほどたって、自分はこれからもソフトウェアエンジニアとして生きていきたいな、と思えるようになり、大学院に入り、学び、研究できるマインドがやっと揃ったように思います。なので僕にとっては社会人経験を積んでから大学院に入ったことがベストな選択だったと今感じています。

おわりに

さて本記事はこれで終わります。プログラミングを学ぶ方が増えてきており、もしかするとその延長で大学院に行きより本格的にソフトウェア工学などについて学びたいと考える方もいるだろうと思います。最近は僕と同じように社会人をしながら大学に通う方も増えてきているように思います。リンダ・グラットンの書いたLIFE SHIFTやWORK SHIFTでも寿命が伸びてきたことにより働く期間が長くなり、学び直しをする期間が必要になることが述べられていました。僕自身はそれに感化されたわけではありませんが、今後の自分のキャリアを考えても必要なことだなと思っています。それでは本記事は以上です。どなたかの参考になれば幸いです。

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